今回のテーマはリカレント教育です。
リカレント教育とは、基礎教育を終えて社会人になったあと、あらためて仕事に活かすために学び直す事です。
その学び方は、再度教育機関(大学、大学院)に戻ったり、会社が定めた外部教育機関や、本業とは一線を画した
社内研修であったりと多種多様です。

では何故、今これ程までにリカレント教育が注目され始めているのか?
ロンドンビジネススクールのリンダグラットン教授は、著書「ライフ・シフト」の中で以下の様に言ってます。
「2007年以降に日本で生まれた子供の50%以上が、107歳まで生きることになる」
つまり、医療技術の進歩や健康増進ブームにより、人生100年時代が間もなく到来するという事です。
そうなると人のライフサイクルはどうなるのでしょうか?
現在と今後を単純比較したものが以下の図です。

現在

今後

国策も変化し、定年再雇用も本人の意思表示があれば70歳まで義務化の法案提出が決まり(2020年国会)更に定年制廃止
などの可能性も囁かれています。
就業可能期間の延伸は歓迎?する一方で、企業の人件費負担が増加するという事は、今以上に再雇用後の所得が減少すると予想され、
加えて、年金支給額の増加がない事を考えると、定年後どのように生活を下支えしていくかは非常に大きな社会課題と言えます。
もうひとつ、AIの指数関数的な進化により、多くの職業がロボットや人工知能に置き換わることで、自分の意志とは関係なくキャリアチェンジ
に踏み出さなければならなくなり、これまで通りに一生を通じて同じ職(営業→営業の転職など含む)に就くのが困難な時代が来るのです。
このような背景のもと、自分のキャリアを自分でコントロールする手段としてリカレント教育(学び直し)が注目されるようになってきました。

では、未来のライフサイクルどうなるのでしょうか?
下がイメージ図です。

勤労期間のところどころで、学び直しをしながらキャリアチェンジに備えたり、より高度な専門知識を習得し独立、或いは
副業のような形で2枚目の名刺を持ち活動する働き方が一般化して行く事が予想されています。

では現在、リカレント教育はどの程度認識されているのか?また、リカレント教育に期待されている事は何なのか?
「日本の人事部・人事白書2018」のデータをもとにレポートします。

Q1:リカレント教育をどのように考えているか?
・大変重要 9.7%
・重要 25.5%
・あまり重要でない 12.9%
・全く重要でない 4.2%
・わからない 47.8%
この結果からも分かるように、現時点ではほとんど浸透してないどころか、認知さえされてないと言えるでしょう。

Q2:リカレント教育のための学びの場の提供
・自己啓発支援(費用補助等) 65.5%
・研修 55.6%
・eラーニング 48.6%
・外部セミナー、勉強会 47.9%
以上が上位ですが、教育機関が全くないのは、大学や大学院がリカレント教育に対応したカリキュラムや講師が不十分である事が要因です。
※文部科学省が7月に発表した資料です。→「リカレント教育の拡充に向けて」

Q3:リカレント教育の実践で期待する効果 ※抜粋
・外部からの新しい知識の持ち込み
・既存の視点からの脱却による、創造性の発揮
・外部との交流による人脈の獲得
・モチベーションや、エンゲージメントの向上
現段階では、未来に向けた個人のキャリアイメージとの関連は薄く、何かしらの知見を得て本業に貢献する事が求められているようです。

このように、まだまだ本来的な意味でのリカレント教育の実践には程遠く、産官学一体となってのこれからの取り組みが期待されるところです。

そう言えば先日、元Googleアジア・パシフィックの、人材育成部門を統括をされていた方のワークショップに参加した時、
「現在のGAFAが持つ技術を集結すれば、日本の殆どの職が人工知能で代替可能」だと仰ってました(汗)
※GAFAとは、Google、Amazon、Facebook、Appleの頭文字で、世界的なビックデータ保有企業
今年度、貴社が新卒を採用しているとしたら、20年後にも彼らが同じミッションを担っているでしょうか?
もし、将来効率化を目指し、その職をAIやロボットに置き換える可能性があるならば、それにより配置転換や転職を余儀なくされる従業員たちの、
未来に向けた学び直しは、誰の手で行われるべきなのでしょうか?

出典及び参考文献
日本の人事部人事白書2018
文部科学省
ライフ・シフト 東洋経済新報社

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